2014年3月4日火曜日

Virginia Genta (Jooklo Duo) インタビュー Part2






インタビュアー:堀 史昌


―なぜだか分かりませんが、私がインタビューしたアーティストは双方ともにインタビューした直後に日本に来ることになりました。なので、あなたたちのパフォーマンスも日本ですぐに見られることを楽しみにしています!日本のミュージシャンで一緒に演奏をしたい人はいますか?小杉武久とのコラボレーションはどんな感じだったのでしょうか?あなたが言うとおり、世界中の音楽に共通点を見出すことができます。例えば演歌とエチオピア音楽はよく似ています。私も普遍的なサウンドを追求することが重要だと思います。しかし、同時に自分の地元特有のサウンドを追求することも重要だと思います。イタリア特有のサウンドを演奏しようと思ったことはありますか?

あなたがインタビューしたアーティストが常に、その後すぐに日本でプレイしたという話が聞けて良かったです。私達もすぐにそうなることを祈っているわ!私も日本で演奏できることを楽しみにしていますよ。サブ豊住や小杉とはまた演奏したいですね。JunkoやJojoともコラボレートしたいですね、彼らは屈強なインプロヴァイザーですから。小杉との作業はとても良かったですね。前にも言ったように、彼に会う前から彼の作品は本当に好きでした。だから、私達のサウンドをミックスすることも、タジ・マハール・トラヴェラーズに関するたくさんのストーリーを聴くのも本当に面白かったですね。彼との作業は私の最良のプロジェクトの一つですね。

まったくもって奇妙な偶然の一致ですが、演歌について言及した質問を書いた同じ日に、私達はオスロで日本のドラマーPikaと朝食をとりながら彼女とこのことについて話していました...。そうですね、あなたの言う通りで普遍的な音楽は地域によって異なり、たくさんのレイヤーやグラデーションの上に成り立つおびただしいほどのサウンドの中に見出すことができます。私は実際に演奏しているものの中に、すでにイタリア特有の、少なくとも地中海域のサウンドが取り入られていると思います。ソプラノサックス、ボンバルド、あるいは他のフルートを演奏している時は特に。


―共演相手として灰野敬二はどう思いますか?それにしても奇妙な一致ですね。いわゆるシンクロニシティというやつでしょうか?「イタリア特有のサウンドを演奏しようと思ったことはありますか?」という質問をしたのはあなた達の激しいサウンドがイタリア音楽のイメージからかけ離れているからです。私はイタリアのハードコアやノイズのミュージシャンであなたたちのような激しいサウンドを出す人を知りません。もちろん、フリージャズのミュージシャンもそうです。あなたのグループはイタリアの中でユニークな存在だと思っています。イタリア音楽へ反抗する意図はありますか?

灰野の作品は良く知らないし、彼に会ったこともないのです、でも不失者の元メンバーで灰野と共に活動していた白石民夫とならコラボレートしたことがあるわ。 いつか彼ら二人とジャムをしたらクールなものになるでしょうね!"イタリアの音楽"というのは考えるには範囲が大き過ぎますね...。イタリア音楽にはクラシック音楽、オペラ、ポップ、ソングライター、ヒップホップ、アバンギャルドなど本当にたくさんのものがあります。イタリアの現代音楽作曲家や実験音楽家の重要な試みは自分の心に留めておく一方で、私は地中海域の音楽にある不可解なルーツを追求しています。もちろん、メインストリームあるいはコマーシャルなイタリア音楽からはまったくかけ離れていますが。あらゆる音楽に対して反抗という意図はありませんね。私は伝えるべきサウンドを追求しているだけで、それが全てです。


―イタリア音楽といえば、例えばホラー音楽(Goblinなど)、オペラ(Pavarrotiなど)、イージーリスニング(Armando Trovajoliなど)を思い浮かべますが、いずれにしろそれらの音楽はハードではなくソフトなものです。MBのようなノイズミュージシャンでさえそれほど激しく感じません。一般的にイタリアの音楽はソフトなサウンドになる傾向があるというのは偏見かもしれませんが、イタリアで激しいサウンドを確立出来た理由やバックグラウンドが知りたいと思ったのです。ところで、あなたのレーベルTroglosoundについての詳細を教えてもらえますか?実験音楽から民族音楽までTroglosoundの作品はどれも本当に興味深いです。どうしてこのレーベルを設立しようと思ったのでしょう?レーベルのコンセプトはありますか?

Troglosoundについてよく書いてくれてありがとう。私達の作品を楽しんでくれてうれしいわ。私達はシンプルに自分自身の音楽をリリースする必要があると思ってレーベルを始めました。今も基本的にやっていることは変わりませんね。グラフィックデザインやアートワークに関する仕事も本当に好きだすね。だから自分たちのリリースは全部自分たちで手がけています。それらはほぼ常にハンドメイドです。


―Trogloの意味はなんでしょうか?Troglosoundからリリースされている韓国のシャーマンによる儀式音楽を興味深く聞かせてもらいましたが、いつどうやってこの音源を録音したのでしょうか?
 
TrogloはTroglodyteつまり、原始人という意味に由来しています。だからTroglosoundは原始的なサウンドという意味です。カセットの一部を見つけてくれてうれしいわ!25部しか作っていませんからね。しかも、それを楽しんでくれてうれしいです。あれは本当に特別で強靭な音楽だと思っています。伝統音楽におけるインプロヴィゼーションでもあります。もっともパワフルな音楽の一つですね。あれは友人からうまく手に入れたライブレコーディングです。


―TroglosoundはMetabolismusの作品もリリースしています。この凄まじいビデオを見た時、感銘を受けました。しかし、私はこのグループについて知りません。なので、Metabolismusについて教えてもらえますか。彼らはどこ出身ですか?いつどこで彼らと出会ったのでしょう?


この質問をしてくれて本当にうれしいわ。彼らはもっと注目を受けるに値する素晴らしいグループです。Metabolismusは80年代後半から活動している(南ドイツの)シュトゥットガルト出身の集団です。彼らはここ数年、頻繁に編成を変えていおり、音楽もそれに伴って変化しています。2、3人でやることもあれば、場合によっては10から15人あるいは20人になることもあるわ!私たちが最初に会ったMetabolismusのメンバーはヨーロッパでも最高の会場のオーナーであるMoritz Finkbeinerですね。電車の車両の中に超クールなバーがあったその会場は数ヶ月前にシュトゥットガルト市によって取り壊されてしまったの...。あらゆる人にとって大きな損失ですね。

私たちは2008年にツアーをオーガナイズしていて、ある人が私にMoritzの車両でプレイさせてもらえるよう彼にメールを書くよう提案してくれて、そうしたのです。それが私たちの出会いで、その夜に彼の会場でMetabolismusの「Terra Incognita」のLPを聴きました。その頃、彼らは確か数年前まで続く一種の活動の空白期間にありました。それから活動を再開し、ギグを始め、新たなレコードをリリースしましたが、本当に凄い!Moritzと会った後、Metabolismusの別メンバーであるWerner Nötzel、Thilo Kuhn and Thomas Schätzlに会い、一緒に演奏をするようになりました。2013年の始めにSinergia Elettronicaという新しいプロジェクトを彼らと共に始めたのです。WernerとThiloはシュヴァーベン地域の丘の中央にある、Sumsilobatemという素敵なスタジオも運営しています。そこにはアナログレコーディングのテクノロジーが備わっていて、あらゆる種類の楽器で完全に埋め尽くされています。ジャムをするには最高で、ビックリするようなところですね。


―Metabolismusの詳細について教えてくれてありがとう。次にSinergia Elettronicaについて教えてくれますか?このグループのアブストラクトなエレクトロ・アコースティックサウンドも好きですね。Sinergia ElettronicaのサウンドはJooklo Duoとも違いますね。このグループを結成したいと思ったきっかけは何ですか?

Sinergia Elettronicaのサウンドを楽しんでくれてうれしいですね。私たちは実験的電子音楽とあらゆる種類の狂ったサウンドにのめりこんでいて、そのような側面をNew Jooklo Ageのようなプロジェクトを通じて何年も活動してきました。私たちはシュトゥットガルトのwaggonでUmwurf(MetabolismusのThilo、 Werner、Moritz、Thomasによる電子音楽の別プロジェクト)とライブをしていて、そこでThilotronというThilo Kuhnが自身で作成したイカれていてユニークな楽器を見つけました。それは光のセンサーによって操作、複数のテープ機材と接続するとても複雑なアナログ・モジュラー・シンセサイザーです。私たちは彼らのギグをとても満喫することができたので、何か一緒にやるべきではないのかと思ったのです。2013年の3月に初めてのツアーをイタリアで行い、6人編成でプロジェクトを上手く行うことが実現できました。そして、これまでに「Live Blob」「Dimensione Parallela」の2つのカセットを録音しています(後に挙げた作品は近くTroglosoundからレコードでもリリースされる予定)。


―Sinergia Elettronicaは来週にツアーに行く予定ですよね?(筆者注:2/15~)ツアーが上手くいくことを祈っています。あなたとChris Corsanoによる「The Live in Lisbon」が"死ぬまでに聞くべきフリージャズ・アルバム"に選ばれましたが、どんな感じがしますか?Chirsについてよく知らないので、彼について教えてください。いつどうやって彼とコラボレートするようになったのですか?彼の演奏についてどう思いますか?


ええ、私たちは来週からSinergia Elettronicaともに北イタリア、オーストリア、スロベニアへツアーに行きます。あのセレクションをコンパイルした人が「The Live in Lisbon」を楽しんでくれて嬉しく思うし、あのようなアンダーグラウンドで、荒く、ワイルドな録音をフリージャズの基本的な聴くべき対象としてみなす勇気を持つ人がいたことに心から感謝します。一方、あれは完全に彼の主観的な見方であるという事実にも気づいています。つまり、もし私があのようなリストを作るならば、違ったものになるでしょう。音楽の好みはこのように主観的なものなのです。

Chrisは優れたインプロヴァイザーで、新しく独創的なドラマーだと思っています。彼は本当に注意深く他の演奏者に耳を傾けていて、良いインタープレイを探っています。小さなパーカッションや物、笛などあらゆるものを使いながら音を探求しているところが本当に好きですね。もしまだ彼を聴いたことがなければ、最近リリースした彼のCD「Cut」をチェックすることをオススメします。私たちは実際に知り合うようになってから何年も経っています。2004年の10月、彼とPaul Flahertyが初めてヨーロッパ・ツアーに来た時、私とDavidは湿っていて汚い不法占拠地で彼らのライブを見るためにボローニャまで車で行きました。そこは当時、実験音楽のホットなスポットだったのです。私はその何ヶ月か前にサックスを始めたばかりで、その夜の彼らのライブには完全にブッ飛ばされたわ!私はとてもシャイだけど、DavidはPaulと直接話に行って、私がサックスプレイヤーだということを彼に伝えてくれました。そして、Paulが私のところに来て、その夜の次のライブに参加するつもりがあるかどうか尋ねてきました。私は演奏を始めたばかりで、演奏はできないと彼に忠告したのですが、彼はとにかくやるべきだと言ってきたのです。それから私たちはその会場に行って、トランペットを吹く私たちのクレイジーな友達と一緒に彼らとジャムをしました。

それからChrisとPaul共に世界中で何回も会い続けていますし、可能な限りいつでも一緒に演奏しています。私たちには共通の友達がたくさんいます。まず、ギタリストのBill Nace。彼とはトリオで一緒にやっているわ。私たちがリスボンに住んでいる頃(2008年)、Chrisはリスボンに来るから街の中でデュオのライブをやらないかとメールしてきました。Ze Dos Bois(街の中心にあるとても素敵なアートと音楽の会場)がコンサートのオーガナイズを引き受けてくれて、私たちに建物の屋上でプレイしないかと持ちかけてきたのです。そこが「Live in Lisbon」が録音されたところです。

似たような話がTroglosoundからリリースされたばかりの真新しいトリオのLPでも起こっています。そのLPはChrisが2012年の7月にイタリアに来る機会があって録音したものです。私たちはヴィットリオ・ヴェネトのとても小さなレストランでショウをやることになりました。そのライブの噂はあっという間に広がってしまったため、会場はとても混み合って外に立って窓から見る人が出てくるほどでした。幸運なことに私たちの古くからの友人Ale De Zanがその場所の角で音楽を録音していてくれたのです。そのライブのために作ったフライヤーがこれです。良かったら見て!次にChrisと会うのは今度の夏で、フランスのマルハウスで行われるMeteo Festivalになりますね。彼はその日のために編成したカルテット(私、Chris、Mette Rasmussen、John Edwards)でプレイする予定です。


―Chrisはあなたに大きな影響を与えたミュージシャンの一人のように思えます。彼以外であなたに大きな影響を与えたミュージシャンあるいはアーティストはいますか?

私は人生は経験そのものだと信じています。だからこの経験をシェアするあらゆる人は人に影響を与え、人を変えていくでしょう。そういった瞬間の方が私自身に影響を与えているし、そういった瞬間がエネルギーになっていると思います。だから、限られた誰かが私に影響を与えていると言うことは難しいですね。


―分かりました。現在のイタリアのフリージャズ/エクスペリメンタル・シーンについて教えてください。イタリアのフリージャズ/エクスペリメンタル・シーンで、あなたたち以外に才能のあるアーティストあるいはグループはいますか。

現在のイタリアのフリージャズについてはよく分かりませんね。実際にそういうものがどれあだけあるのかも良く分かりません。私はイタリアでフリージャズあるいは別の種類の非商業音楽に人生を賭けている人を誰も知りません。遅かれ早かれ、あらゆる人は彼らのエゴを満たすため、あるいは自分たちが生き延びられるように別のことを始めます。それは私が求めていることではありません。私も生活はしたいですが、生き残ろうとは思っていません。
さらに私は多くの時間を海外を旅することに費やしています。地元にいるときも田舎で孤立して生活しているため滅多にライブには行きません。ツアーに出ないときは、平和と孤独を楽しむことが好きなのです。ですが、最近になって過去にみたことがなかったイタリアのアーティストによるいくつかの素晴らしいライブについてなら話すことができますね。イギリスのブライトンにあるColour Out Of Spaceで昨年の11月に行われた、Enzo Minarelliによる未来派のスポークン・ワード、それから何週間か前に行われたオスロのAll Ears festivalでの、ナポリのデュオAspec(t)による信じられないほどに実験的な電子音楽のセットは本当に素晴らしかったわ。彼らはRevoxのテープレコーダー、インプットのないミキサー、マウスピース無しのサックスを使って演奏していました。

―長い間協力してくれてありがとう。これが最後の質問です。もしあなたが後一度しか音楽を聞けないとしたらどんな音楽を聴きたいですか?

ありがとう、今回の長い会話はいい経験になりました。最後は難しい質問ね...。えー!たった一度だけ?...このビデオかな。ディストーションそのものだから。これを聴いた後では、何も聴くことができなくなるはずです。(音を大きくして最後まで再生して!)

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