Text:Onnyk
音楽の極点を目指すレーベル「オメガポイント」(東京)は、第二次大戦後の日本の作曲家達の、知られざる傑作、埋もれた名作を発掘し、自主制作してきた希有な存在である。その作品は特に電子音楽、テープ音楽と呼ばれる分野に特化している。最近では2年前、ジョンケージ生誕百周年に合わせて、1962年にケージが盟友デヴッドチュードアと共に初来日して、草月会館において繰り広げた驚くべき演奏の数々を、眠っていたテープ群の発見により遂にCD、LPとしてリリースした(当時の上演風景の写真も併せて)。これこそのタイトル通り「ジョンケージショック」だった。
そのオメガが自信をもって送り出した電子音楽の傑作がここにある。仙台出身の作曲家、佐藤聡明の自作録音による2作、「エコーズ」(81年)と「エメラルドタブレット」(78年)である。オリジナルテープが失われ、またマルチチャンネル録音であったことから有馬純寿の尽力によって改めてマスタリングされ、佐藤自身からもお墨付きをもらった状態でリリースされた。その音の幽玄さは筆舌に尽くし難い。恐るべき闇と、その彼方から指して来る光明のような、あたかも臨死体験とはかくやと言えそうなサウンドの波が押し寄せて来る。情緒不安定な人には推薦できない。これは明け方に、一人で、充分にリラックスした状態で聴くべきである。そうでなければこの2作品の真の価値は分かるまい。
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