文:堀 史昌
現在のレコード事情について触れる前に、簡単にレコードの歴史について振り返っておきたい。
電子工学の博士であるPeter
Goldmarkの指揮の元、アメリカのColumbia RecordsがLP盤
(直径30cm、33回転)の量産、商品化に成功したのは1948年のことである。LP(Long Playing
の略)と呼ばれるようになったのは、アナログLP以前のレコード盤と同じサイズで格段に長い
時間再生できるためである。
LPの誕生以降、従来のシェラック78回転盤はSP(Standard
Play)と呼ばれるようになった。
レコードのアルバムといえば、このLPのことを指す。翌年にはRCA Recordsから17cmのEP盤
が発売されている。レコードのシングルと言えば、このEPか12インチ(直径30cm、45回転)の
ことを指す。日本では1951年に日本コロムビアから日本初のLPが発売されているが、公務員
の初任給6,500円の時代に1枚2,300円という価格だったため、すぐに普及することはなかった
という。
シングルが主流だった50年代とは異なり、60年代に入ってからは音楽だけでなくジャケット
のアートワークも含めたトータルの作品性を打ち出した、アルバムというコンセプトが発達
した。ロック、ジャズ、ソウルを始め様々なジャンルのグループやアーティストが、アルバム
を制作することによって3分間のシングル盤では体現できなかった、より深い世界観を提示
する事に成功した。
アルバムによってLP盤の売上が上がり、音楽産業全体が爆発的に成長した。BBC4が制作した
「When
Albums ruled the World」というドキュメンタリーにはアルバムの影響力の大きさ
が描かれている。
アメリカにおいて、LPは最盛期の1977年には3億3000万枚の売上があり、音楽市場の過半を占める存在にまで成長した。イギリスでも1週間に100万枚のレコードをプレスしていたそうだ。現在の状況から考えると信じられないという人もいるかもしれないが、70年代にレコードは最も多く聴かれていた音楽メディアだったのだ。
しかし、80年代に入ってCDが登場してからは、状況は一転する。リスナーは徐々にコンパクト
で手軽なCDに切り替え、レコードはほぼ完全に見捨てられてしまうようになる。レコードが
人々から忘れ去られてしまうまでに、それほどの時間はかからなかった。一説ではレコード
が音楽市場から姿が消えたスピードは、8トラックテープが市場から姿を消すときよりも
早かったらしい。とにかく、90年代に入る頃にはレコードは音楽市場の1%を切ってしまうほど
にシェアが縮小してしまう。
CDが主流の音楽メディアにのし上がり、レコードが音楽市場から姿を消す。これは、アメリカ
に限らず、世界中の国で起こったことである。ただし、日本は90年代にDJやレアグルーブ
といったムーブメントが発生し、若者の間で再びレコードが人気のメディアとなる。その
ムーブメントの中心地であった渋谷・宇田川町は実に50軒以上ものレコードショップが乱立する
世界随一のレコードショップ街となった。海外の多くのミュージシャンやDJからも日本=レコードが
豊富な国という認識を持たれるようになった。
に限らず、世界中の国で起こったことである。ただし、日本は90年代にDJやレアグルーブ
といったムーブメントが発生し、若者の間で再びレコードが人気のメディアとなる。その
ムーブメントの中心地であった渋谷・宇田川町は実に50軒以上ものレコードショップが乱立する
世界随一のレコードショップ街となった。海外の多くのミュージシャンやDJからも日本=レコードが
豊富な国という認識を持たれるようになった。
つまり、日本は現在世界で起こっているレコード人気に先んじて、レコード人気が復活した国
なのである。世界的にも特異なこの現象については連載の後半で触れる。
なのである。世界的にも特異なこの現象については連載の後半で触れる。
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