2013年8月30日金曜日

Vinyl Experience(3)  6年間でレコードの売上は5倍に


文:堀 史昌


アメリカは世界随一の音楽大国と言っていい。CD、レコードなどの物理的メディア=フィジカルと、ダウンロード、
ストリーミングを含めた有料音楽配信=デジタルに音楽の二次使用による権利収入を合わせた音楽売上高は2012年度で
世界一位である。

そのような状況の中で、果たしてレコードの人気はどの程度あるのだろうか。
具体的な数字を見てみよう。以下はアメリカにおけるアナログLPの売上をグラフ化したものである。





(出典:Digital Music News)



グラフを見てもらえれば分かる通り、93年に30万枚に過ぎなかった売上は徐々に増えていき、00年に150万枚まで伸びる。 
しかし、そこからじわじわと下降して05年には90万枚にまで落ち込んでしまう。

状況が一転したのは0708年頃である。07年以降は毎年確実に売上は増えていき、12年には460万枚にまで達している。
06年からの6年間で売上枚数は実に5倍にまで増えている。そして、現在も人気はとどまることを知らない。レコードの
売上を調査しているニールセン・サウンドスキャン社の副社長David Bakulaは、2013年は550万枚売れると見込んでいる。

ここ数年ハイペースで売上を伸ばしているレコードだが、果たして音楽売上全体の中ではどの程度の規模を占めている
のだろうか。12年度のデジタルを含めたアルバムの売上枚数は45000万枚であり、その内アナログLPの売上は
460万枚。

つまり、アナログLPの売上はデジタルを含めたアルバムセールス全体の1%程度の規模に過ぎない。この数字から判断
すると、レコードはまだまだニッチなメディアであるという感は否めない。しかし、実際の売上はデータに現れている数字
よりもはるかに大きいという説もある。

アメリカのアナログLPの実際の売上はニールセン・サウンドスキャン社のデータの約7倍は売れている可能性がある。
クリーブランドのレコードプレス工場、Gotta Groovesのオーナー Vince SlusarzNY Timesのインタビューで、
ニールセン・サウンドスキャンはレコード売上全体の内、わずか15%しか計測していないと述べている。
ニールセン・サウンドスキャンはバーコードが貼られているレコードのみカウントしているが、 Gotta Groovesでプレス
しているレコードの大部分はバーコードが貼り付けられていないと言うのだ。

サンディエゴのU-T Sandiego紙にも以下のような指摘がある。以下、引用。

 「バーコードが貼られた作品とメジャーレーベルの作品の売上を計測するニールセン方式によれば、レコードの売上は
全米の音楽セールスの内わずか1%に過ぎない。しかし、レコードというフォーマットの規模はさらに大きく、
レーベルやディストリビューターを通さずに作品を流通させている幾千ものバンドと彼らのファンの中に存在する
レコード支持者を見逃している、とレコードの好事家たちは述べている」
(引用終わり)
 
この文からも、ニールセン・サウンドスキャン社のデータはあくまでも実態の一部しか現していないことが分かる。
ニールセン・サウンドスキャン社が測定しているのは新譜のみであるから、レコード市場のかなりの部分を
占めていると思われる中古盤のデータも除外されている。

レコード・プレス工場、Furnace ManifacturingCEOであるEric Astorも、レコードの売上枚数は過小に報告されていると
見ている。Ericによれば全米では毎年1,2001,500万枚のレコードがプレスされており、彼の工場だけでも昨年300万枚
をプレスしたそうだ。

ニールセン・サウンドスキャン社のレコードの売上データは参考程度にとどめておくのは構わないだが、全てを鵜呑みに
してしまうと、近年のアメリカのレコード人気の実態を正確に捉えることは出来ないと思っている。
少なくとも、アナログLP460万枚という規模よりはるかに売れていることは間違いないだろう。

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