文:堀 史昌
Kindness「デジタルファイルを作るのは、仕事を覚えたてのインターンだってできる。
気にしない人も多いだろうけど、実際、レコードを作るのには多くの人間が関わっているんだ。
人の手を経たからこそ、そこになんらかの感情の余韻があるのだと、僕は思う」
「われわれが享受している音楽の多くがコンピューターを使って作られる時代が続いていたが、突然レコードがマーケットで受け入れられるようになったのは何故だろうか?私は、レコードの復興はデジタル時代のハイパーリアリティに対する大きな反動の一部だと確信している。"download
torrent"と書かれたボタンをクリックすることと、自分と同じ趣味を持つ人たちによってセレクトされた、実体のある商品を見ることができるショップに足を運ぶことには違いがあるということだ」
(アートライター・Michael Cuthbertson)
以前の記事のグラフを見てもらえれば分かるが、アメリカでのレコードの売上が伸びてきたのは07年からで、ちょうどサブプライムローン問題が浮上した時期に重なる。そして、その翌年にはリーマンショックが発生する。つまり実体を伴わない金融経済が壊滅的な打撃を受けている最中に、実体の伴ったレコードが受け入れられていったわけで、実に興味深い現象だと思っていた。