2013年10月17日木曜日

Vinyl Experience (5) アンチ・デジタルミュージック



文:堀 史昌


Kindness「デジタルファイルを作るのは、仕事を覚えたてのインターンだってできる。
気にしない人も多いだろうけど、実際、レコードを作るのには多くの人間が関わっているんだ。
人の手を経たからこそ、そこになんらかの感情の余韻があるのだと、僕は思う」


「われわれが享受している音楽の多くがコンピューターを使って作られる時代が続いていたが、突然レコードがマーケットで受け入れられるようになったのは何故だろうか?私は、レコードの復興はデジタル時代のハイパーリアリティに対する大きな反動の一部だと確信している。"download torrent"と書かれたボタンをクリックすることと、自分と同じ趣味を持つ人たちによってセレクトされた、実体のある商品を見ることができるショップに足を運ぶことには違いがあるということだ」
(アートライター・Michael Cuthbertson)

以前の記事のグラフを見てもらえれば分かるが、アメリカでのレコードの売上が伸びてきたのは07年からで、ちょうどサブプライムローン問題が浮上した時期に重なる。そして、その翌年にはリーマンショックが発生する。つまり実体を伴わない金融経済が壊滅的な打撃を受けている最中に、実体の伴ったレコードが受け入れられていったわけで、実に興味深い現象だと思っていた。

2013年10月11日金曜日

Cammisa Buerhaus インタビュー






                              
 インタビュアー:堀 史昌

  
 美術/音楽/メディアといった特定の領域にとらわれない、NYのアーティストCammisa Buerhaus(カミッサ・ビュアハウス)。ここ数ヶ月の活動だけを見ても、自作のパイプオルガン、ラジオを使ったパフォーマンス、歌に重点を置いたミックステープと変幻自在であり、次に何をするのかは予測困難でもある。今、筆者が最も注目しているアーティストである彼女に、メールによるインタビューを試みた。


-あなたのことを初めて知ったのはクロマ・カラー・オルガン(自作のパイプオルガン)を演奏しているビデオです。そのオリジナリティには驚かされました。クロマ・カラー・オルガンのアイディアはいつ、どのようにして思い浮かんだのですか?

Cammisa:クロマ・カラー・オルガンは多目的な躯体の彫刻という私の夢から生まれたものです。今からその彫刻について書きます。中心は大きな木の回転木戸になっていて、とても重いため、回転させるのに8人の人が必要でした。回転木戸の掛け釘は高い柱によって羽根と接続されていました。回転木戸が回ると羽根が冷却材的な役目をしながら、それに反発する力が働いて逆風の風洞を発生させるようになっていたけど、人間を文字通り吹き飛ばしたりしていたわ。 

2013年10月5日土曜日

ニューナンブ (2)



Text:Onnyk


<第五列誕生前夜2>




  高橋昭八郎という人は、非常に話し好き、陽気、寛容、仕事好きな、そして現代芸術に関しては全般に、そして特に文学には広い知識を持っていた「前衛詩人」でした。

 交流範囲も広く、地元名士から全国の詩人、芸術家、そして海外の詩人達との交流(フルクサス関係や、オクタヴィオ・パス、ラウール・ハウスマンまで!)もありました。それもその筈、彼の重要な方法論のひとつは「メールアート」だったのです。

 今の人にはピンと来ないかもしれないけど、要するに郵便というシステムを使った芸術です。これはいろんな方法がある。例えば「郵送可能なものなら、何でもいいから作品展に送ってくれ。期間はいつからいつまで、場所はどこそこだ」というようにするものから、郵便物そのものが作品である場合もある。詩が一編書いてあってもいいし、言葉がひとつあるだけでもいいし、絵でも記号でも、あるいは指示が書いてある場合もある。例えば「このハガキを受け取った人は、何月何日何時何分何秒から何時何分何秒まで、これこれのことをしなさい」というような。または、大きな作品が分解されて世界各地の人に送られるとか。郵便でどれだけのものが送る事が可能か実験してる例もありました。あるコンセプトに基づいて、あるサイズのものを送ってもらうなんていうのもあった。